CSだより ~9月号~

CSだより ~9月号~

日中の日ざしはなお厳しいものがありますが、朝夕はすでに秋です。

さて、東京オリンピックの招致で『おもてなし』が取り上げられたこともありますが、今では至る所で『おもてなし』や『サービス』という言葉を聞きます。ですが多くの人がこの違いを、意識していないのではないでしょうか?

店舗における『おもてなし』と『サービス』を向上させるには、先ずはそこで働く、リーダーは勿論、全従業員等が、その違いを理解して実行できるようにしてもらうことです。

今回の『CSだより』では、これらの違いについて、お話させていただきますので、『感じの良い店作り』の為にサービス業を営む者として下記のとおり共有しましょう。

私のCS研修でよく最初におもてなしとサービスの違いについてお聞きしますが、答えられる方はほとんどいません。勿論、CS研修ではその都度、詳細に説明していますが、但し言葉の説明や言語の丸暗記は誰にでもできます。肝心なのは、現場で働く私達は、それを 臨機応変に変換して『人(お客様)』に対して行なわなければならないことです。

つまり、大事なことは、行動できるかどうか。そのほうが大事ですよね。私の研修では サービスとは、『いつでも、どこでも、誰にでも』。おもてなしは『この時、この人だけ、ここに居なくとも』これが決定的な違いであることをエピソード等、交えて教えています。

例えば焼肉屋さんで、ご清算後に『ハッカ飴をどうぞ』ともらうことがよくあります。 これはおもてなしでなくサービスです。籠に貼紙が有り『ご自由にどうぞ』と書かれてあっても、笑顔のかわいらしい店員さんが『もしよろしければどうぞ』と手渡してくれても、 サービスの域を出ません。なぜなら、いつでも、誰でも、どこでも出来ることだからです。

  それでは、旅館やホテルで部屋まで荷物を運んでくれるのは『おもてなし』でしょうか?

『サービス』でしょうか?答えはサービスです。これも同じく、いつでも、誰でも、どこでも出来ることだからです。

次にこれはどうでしょうか?雨の日、宿泊先のホテルに向かう途中、道に迷い電話で道を聞いたところ『そこで待っていてください』と走って傘を持って迎えに来てくれたとします。『おもてなし』でしょうか『サービス』でしょうか?答えはおもてなしです。

 これは実際、私が出張先のあるホテルで経験させてもらったことで、大変感動しました。

 私は電話した時に、その場所まで迎えに来てくれることなど、まったく期待していませんでした。ただ電話越しに『何が見えますか?』と道案内をしてくださるだけだと思っていたのです。特に嬉しいのは、突発的な行動力と私だけのためにという点です。そんな心の こもったスタッフさんのいるホテルには、高級ホテルでなくとも何時だって行きたい。あのスタッフさんに、また会いたいと思ってしまうものです。

『おもてなし』や『サービス』を改めて考えてみると、とても面白いものです。以下の 別表にまとめましたが、『サービス』は有料であったり、計画的であったり、戦略的な、いわゆる決まったことを実行すること。一方で『おもてなし』は無料で見返りを求めない行為です。

 サービスとして行なうことでも、私達の心が入ることで、それはおもてなしになります。つまり、心にとめておきたいことは、心が入っているかどうかという点です。気をつけたいことは、サービス・接客する側が『これはおもてなしです。』と断言してはいけないことです。決めるのはお客様です。

  皆さん、最近受けたサービスで嬉しかったことはどんなことでしょうか?

おもてなしとサービスの違いを考える際、気づかされるのは、いかに『おもてなし』を行なう会社やお店が少ないか、ということです。皆さんのお店ではどのようにサービスやおもてなしの実践ができているでしょうか。決して会社のマニュアルだけでは人の心は育ちません。是非皆さんの店舗では『サービス』だけでなく『おもてなし』が自然にできるようになってください。そのためには店舗責任者等が、しかめっ面して楽しそうに働けと言ってもダメです。先ずは店舗責任者等が一番楽しそうに働くこと、良いサービスをしょうとするお客様への姿勢を日々スタッフに見せること、誰でも出来ることを誰でも出来ない位にやること、当り前なことを圧倒的にやること。笑顔も声も元気もしぐさも全てです。スタッフはそんなリーダーの背中に教えられて、おもてなしは自然とできるようになるものです。

 それでは、夏の疲れが出やすいときです。皆様、お体には十分お気をつけ下さい。

青木

 

Continue Reading

CSだより ~8月号~

CSだより ~8月号~

今年、東京の梅雨明けは、だいぶ遅れてようやく暑さが盛りですが、暦の上では もう秋ということです。厳しい暑さの中、皆様の日夜の勤務に感謝しております。

本題の前に、先日ちょっと嬉しい言葉を本社ビルの清掃員の方から頂戴しました。

私が、トイレ清掃中にトイレを使わせて頂きトイレを出る時に、使わせて頂いたお礼と一緒に『いつも綺麗にして頂いてありがとうございます。』と感謝を伝えると、その清掃員の方は、『いえいえ、この階のトイレが、このビルの中で一番綺麗なのですよ、こちらこそ、いつも綺麗に使って頂いてありがとうございます。』と逆にお礼を言われました。本社が入っているビルは12階建てビルの3階ですが、11階以下は全てオフィィスが入っており、その中で当社のトイレが一番版綺との言葉は、私は何より大変嬉しかったです。

さて、今回の『CSだより』では、そんなトイレの清掃員のあるエピソードを紹介いたします。世の中に仕事で与えられる責務は数え切れないほどの種類があり、どんな仕事も必要だから、感謝の対価(給料)が支払われる訳です。決して差別したりバカにしたりすることは許されません。この話はトイレ清掃員の女性をバカにした二人の大学生が、 ある男性の一言に凍り付いてしまう実話です。どうぞ、ご自身の心を育てるためにも読んで見て下さい。

≪あるトイレ清掃員の話≫

トイレ清掃員は、とても簡単な仕事ではありません。男女問わず定期的に清掃に入り、便器の隅々まで清掃を行ないます。勿論、ゴム手袋はしていますが、時に頑固な汚れが付着していたり、ガムなどの粘着物が吐き捨てられていたりした時は、素手で作業するときだってあります。私は、そんなトイレの清掃員をしています。

 ビル清掃の会社でパートとして働き、来る日も来る日もトイレやビルの共有部の清掃を行なっています。とは言え、この作業が好きだからやっているなんて、カッコイイ事は言いませんし、言えません。ただ1つ言える事は「仕事があるだけで、仕事を与えられているだけで感謝している」と言うことです。

 元々は正社員として働いていたのですが、6年前に急にリストラされてしまいました。  当時、上司に言われた解雇理由は今でも忘れません。

『女性だから、今後のことを考えて優先的に切っていくことにした。』

こんな無責任な酷い一言だけでした。そんな経験を経てきた私にとって、どんな仕事でも差別されずに必要とされる仕事は有り難く、とてもやりがいのあることです。

来年で55歳を迎えますが、日々喜んでトイレ清掃を行い、利用者が快く使用出来るよう心掛けてピカピカにしています。

 清掃中は、もちろんトイレの前に『清掃中』の立て看板を置いて作業をしますが、それでも利用者はどんどん入ってきます。普段、利用者にとっては「空気」の様な存在である私達は、特段気にもしませんが、気にもされてもいません。それぐらいが丁度いいのです。

しかし、ちょうど1年前にとても嫌な経験をしたのです。いつも通り男子トイレの清掃に入り、小便器をゴシゴシと掃除していた時です。ビジネスタワーでもあるこのビルでは、 丁度どこの企業も新卒採用の面接を行なっている時期でしたので、大学生などリクルートスーツに身を包んだ若者が頻繁に出入していました。

私が小便器を丁寧に掃除していると、笑いながらまだ初々しい姿の大学生2人がトイレに入ってきたのです。

そして、すぐに小便器を掃除する私に向かって、ひどい言葉を,つぶやいてきました。

『こんな仕事、嫌だよな~。マジ無理だわ、俺。』

『いや無理とかってレベルじゃないだろ。トイレ掃除とか、キモイって!』

『とりあえず、こうなったら人間のゴミだわ。』(笑い)

私は、知らないフリ、聞こえないフリをしていました。一生懸命悔しい気持ちと怒りを食いしばり我慢しました。ここで言い返したりしては、私はこの大学生たちの言う様に本当の『ゴミ』になってしまう様な気がしたからです。

言い返す = 認めること、この様な思いが、とっさに私の心の中で我慢するという選択を取ったものだと思います。

しかし、この大学生二人組みは、この後凍りつくような窮地へと追い込まれる事となったのです。この大学生たちのすぐ後ろから入ってきた一人のおじさん、このおじさんが大学生の2人が私のことをバカにした後、ボソッと大学生に言葉をかけたのです。

『君たちは就活生かい?だとしたら、0点だね。なぜなら君たちは、仕事の意味を履き違えているようだ。どんな仕事でも、仕事があるという事は、必要とされているからなんだよ。誰にでも出来る仕事じゃないことをしてくれる人がいるからこそ、君たちは何不自由なく便利に使えたり利用できたり出来るんだ。立派な仕事だ。』

更におじさんは続けます。

『いいかい?「ゴミ」なんて言葉を使うんじゃない。掃除をする方が掃除をして給与をもらうだろう?これは、その仕事や人に対しての「対価」=「ありがとう」と言う 報酬なんだよ。そこにお金という対価が発生しているという事は、社会に必要とされているからなんだ。ゴミじゃないんだよ。』

『でも、きっと雇う側も、仕事を与える側も、君たちの様な価値観の人間には何も渡さないと思うが、どう思う?』

そう、おじさんは言い、ふと大学生が首から下げている名札を見てから、更に笑みを浮べてこう言います。

『ふむ、面接か・・・。楽しみだね。その名札のロゴは私の会社のシンボルマークだよ。後で、面接室で続きを話そう。』

一瞬、この意味が私には理解できませんでした。しかし、大学生たちはすぐにこの意味を悟った様子でした。どうやら、このおじさんは彼たちがこの後、面接を受ける会社の社長だったのです。私もこのビルの清掃をして何度か見かけた事はある顔でしたが、まさか会社の社長さんだったとは知りませんでした。

 私はこの仕事を与えられているだけで感謝しています。与えられている事、任せてもえる喜びを知っているから・・・。

世の中に仕事で与えられる責務は数え切れないほど種類はあるでしょう。しかし、それをバカにしたり差別したり比べる事は、決して良くないことだと思います。その職種、その責務には全てに『事情』があり『目的』があることを忘れてはいけません。

 この翌日から、トイレで用を足しながら大学生へ説教をした『少しワイルドなおじさん』は私を見る度に微笑んでくれます。そして、必ず一言声をかけてくれます。『いつもご苦労様』 ただ、その二人の大学生をこのビルで見かけることは、あれ以来一度もありません。

以上です。どうでしたか?最後にちょっと胸がスッキリしましたね。しかし、この大学生のように、これから社会で働こうとする人の中には、まだ社会や仕事に対する考え方に問題のある人は少なくないかも知れません。この大学生も、この一件が心に響いたのであれば、「良い経験をした」と注意をしてくれた社長に感謝をするべきですね。

とかく、人は見た目や外見から、物事の善し悪しを決めがちですが、このような仕事への偏見や差別発言は誰かに厳しく指摘され正されないと、自己の人生においても大きなマイナスとなります。 

また、最後に『真のプロ』と呼ばれる人は、相手の心の痛みの解る人だと言われます。誰にも「心」は見えませんが「心配り」は誰にでも見えます。それは、人が人に対する積極的な行為だからです。

トイレ掃除の業務に限らず、日々の生活において自分が「ありがたい」と感じたことは、素直にその時その場で感謝の言葉をかけられる人でいましょう。

CS室 室長  青木      

Continue Reading

CSだより ~5月号~

CSだより ~5月号~

若葉青葉をわたる風も快く感じられますが、皆様の日夜の勤務に感謝しております。

さて、今回の『CSだより』NO.46では、日々の気づきということでお話させて頂きます。私は先週、ある本を読んで気づかされました。本の題名は『自分の小さな箱から  脱出する方法』という単行本ですが、私の反省体験談として、お話させて頂きます。皆様にも、忙しい日々の接客や私生活において、ともすると誰しも忘れたり勘違いされたりしがちなエピソードだと想いましたので、是非ご一読願います。

では、何に気づかされたかというと、この本を読む前の先々週のことです。デパートのエレベーターで、私とベビーカーを押した子連れのお母さんが、指定した階に到着して、 私が先に出て扉を開けておいてあげて、お母さんと子連れがエレベーターを降りるのを エスコートしました。けれど、お母さんは私にペコリともしません。私は「なんだ、このお母さんは、なかなか失礼だなぁ」と心の中で正直、思っていました。

 

それから数日後、私は前記の単行本を友人に紹介され読んだところ、あの日の出来事を 思い返して反省させられたのです。

振り返ってみると、私はあの時、そのお母さんへの思いやりの心で扉を開けてエスコートしたわけではなく、「私は道徳的な行動をする男だぞ。」と自分の自尊心のためにやったことだと気付きました。

本当の思いやりの心からであれば、ペコリとしてくれるかどうかなんて関係ないことですよね。「どうぞお母さん、出てくださいな。」で、十分にすがすがしい筈なのです。

私は、反省しました。いつのまにか、「私は道徳的な自分だ~。」と見せることと、『本当に心から湧いてきて道徳的な行動をすること』が恥ずかしながら私の心の中で、すり替わってしまっていたのです。日頃から仕事中ばかりでなく、私生活でも同様に行動することを自ら意識してはいたのですが、ふっとした瞬間に相手の態度を気にする自分に気付かされたのです。

けど、気づけてよかったです。あの本のお陰です。ありがとう・・・。

 そして、一昨日の出来事ですが、池袋駅北口改札の前で目の前の男性が小銭をババッと落としたので、何枚か一緒に拾ってあげました。 彼は『あっ、ありがとうございます。』と言ってくれました。それはそれで当然うれしかったのですが、それに加えて、相手からのリアクションに関係なく思いやりからやった自然な行動だったので、相手の反応など、全く気にせずにいましたから、自分として大変すがすがしかったです。

 あの本を読む前なら、その男性から『ありがとう』の一言を、言ってもらっても『まあ、それはありがとうくらい当然言うだろうねぇ。』と捉えていたかも知れません。するとあのすがすがしさはないと思います。『ありがとう』の言葉にありがたさを見つけられなかったかも知れません。

 そもそも、ホスピタリティーとは、思いやり(サービス)を示した相手に喜んでいただけることで、自分も同じく嬉しい気持ちになれる行為を指しています。私を含めてサービス業に携わる者として、店舗の業務だけでなく私生活における日々の忙しい暮らしの中でも、

忘れたり勘違いをしたりすることのないように、今回お話した私の反省体験談のように、皆様には、心配無用とは存じますが、当り前のことでも時にリセットする機会を持たれるのも良いかと思い、紹介させて頂きました。

 また最後に一言、サービス業に携わる者としても、共有したいことがあります。それは、逆に人から親切を受けた時に自然と口から出る『ありがとう』の言葉は感謝の心です。

では、感謝の反対の言葉は何でしょうか?『怒り』ではありません。『当然』(当り前)という言葉です。

誰しも人は当り前と思っていると感謝の言葉は口から出てきません。仕事においても、上司は部下がしてくれて当り前だとか、従業員は会社がしてくれるのが当り前とか、心に あると感謝の言葉は口から出てきませんので、風通しも生産性も悪い職場になりがちです。

尚、今回紹介しましたこの本は、単行本ですぐに読めます。以下のアドレスをネット検索すれば買わずともほぼ読むことが出来ますので、一度読んで見たらいかがでしょうか? きっと、本当に心から湧いてきた道徳的な行動をすることと、親切の押し売りを思いやりと勘違いして、すり替わってしまうことが、仕事中は勿論、私生活においても無いように、この本が教えてくれると思いますよ。

題名『自分の小さな箱から脱出する方法』

http://bizpow.bizocean.jp/review/20150105/

では、季節の変わりめであり、また、暑い季節に向かいますので、お体には十分お気をつけ頂き、今月も健康で明るい笑顔をお客様にプレゼントして下さるようにお願いします。

CS室 室長 青木

 

 

Continue Reading