CSだより ~8月号~

CSだより ~8月号~

今年、東京の梅雨明けは、だいぶ遅れてようやく暑さが盛りですが、暦の上では もう秋ということです。厳しい暑さの中、皆様の日夜の勤務に感謝しております。

本題の前に、先日ちょっと嬉しい言葉を本社ビルの清掃員の方から頂戴しました。

私が、トイレ清掃中にトイレを使わせて頂きトイレを出る時に、使わせて頂いたお礼と一緒に『いつも綺麗にして頂いてありがとうございます。』と感謝を伝えると、その清掃員の方は、『いえいえ、この階のトイレが、このビルの中で一番綺麗なのですよ、こちらこそ、いつも綺麗に使って頂いてありがとうございます。』と逆にお礼を言われました。本社が入っているビルは12階建てビルの3階ですが、11階以下は全てオフィィスが入っており、その中で当社のトイレが一番版綺との言葉は、私は何より大変嬉しかったです。

さて、今回の『CSだより』では、そんなトイレの清掃員のあるエピソードを紹介いたします。世の中に仕事で与えられる責務は数え切れないほどの種類があり、どんな仕事も必要だから、感謝の対価(給料)が支払われる訳です。決して差別したりバカにしたりすることは許されません。この話はトイレ清掃員の女性をバカにした二人の大学生が、 ある男性の一言に凍り付いてしまう実話です。どうぞ、ご自身の心を育てるためにも読んで見て下さい。

≪あるトイレ清掃員の話≫

トイレ清掃員は、とても簡単な仕事ではありません。男女問わず定期的に清掃に入り、便器の隅々まで清掃を行ないます。勿論、ゴム手袋はしていますが、時に頑固な汚れが付着していたり、ガムなどの粘着物が吐き捨てられていたりした時は、素手で作業するときだってあります。私は、そんなトイレの清掃員をしています。

 ビル清掃の会社でパートとして働き、来る日も来る日もトイレやビルの共有部の清掃を行なっています。とは言え、この作業が好きだからやっているなんて、カッコイイ事は言いませんし、言えません。ただ1つ言える事は「仕事があるだけで、仕事を与えられているだけで感謝している」と言うことです。

 元々は正社員として働いていたのですが、6年前に急にリストラされてしまいました。  当時、上司に言われた解雇理由は今でも忘れません。

『女性だから、今後のことを考えて優先的に切っていくことにした。』

こんな無責任な酷い一言だけでした。そんな経験を経てきた私にとって、どんな仕事でも差別されずに必要とされる仕事は有り難く、とてもやりがいのあることです。

来年で55歳を迎えますが、日々喜んでトイレ清掃を行い、利用者が快く使用出来るよう心掛けてピカピカにしています。

 清掃中は、もちろんトイレの前に『清掃中』の立て看板を置いて作業をしますが、それでも利用者はどんどん入ってきます。普段、利用者にとっては「空気」の様な存在である私達は、特段気にもしませんが、気にもされてもいません。それぐらいが丁度いいのです。

しかし、ちょうど1年前にとても嫌な経験をしたのです。いつも通り男子トイレの清掃に入り、小便器をゴシゴシと掃除していた時です。ビジネスタワーでもあるこのビルでは、 丁度どこの企業も新卒採用の面接を行なっている時期でしたので、大学生などリクルートスーツに身を包んだ若者が頻繁に出入していました。

私が小便器を丁寧に掃除していると、笑いながらまだ初々しい姿の大学生2人がトイレに入ってきたのです。

そして、すぐに小便器を掃除する私に向かって、ひどい言葉を,つぶやいてきました。

『こんな仕事、嫌だよな~。マジ無理だわ、俺。』

『いや無理とかってレベルじゃないだろ。トイレ掃除とか、キモイって!』

『とりあえず、こうなったら人間のゴミだわ。』(笑い)

私は、知らないフリ、聞こえないフリをしていました。一生懸命悔しい気持ちと怒りを食いしばり我慢しました。ここで言い返したりしては、私はこの大学生たちの言う様に本当の『ゴミ』になってしまう様な気がしたからです。

言い返す = 認めること、この様な思いが、とっさに私の心の中で我慢するという選択を取ったものだと思います。

しかし、この大学生二人組みは、この後凍りつくような窮地へと追い込まれる事となったのです。この大学生たちのすぐ後ろから入ってきた一人のおじさん、このおじさんが大学生の2人が私のことをバカにした後、ボソッと大学生に言葉をかけたのです。

『君たちは就活生かい?だとしたら、0点だね。なぜなら君たちは、仕事の意味を履き違えているようだ。どんな仕事でも、仕事があるという事は、必要とされているからなんだよ。誰にでも出来る仕事じゃないことをしてくれる人がいるからこそ、君たちは何不自由なく便利に使えたり利用できたり出来るんだ。立派な仕事だ。』

更におじさんは続けます。

『いいかい?「ゴミ」なんて言葉を使うんじゃない。掃除をする方が掃除をして給与をもらうだろう?これは、その仕事や人に対しての「対価」=「ありがとう」と言う 報酬なんだよ。そこにお金という対価が発生しているという事は、社会に必要とされているからなんだ。ゴミじゃないんだよ。』

『でも、きっと雇う側も、仕事を与える側も、君たちの様な価値観の人間には何も渡さないと思うが、どう思う?』

そう、おじさんは言い、ふと大学生が首から下げている名札を見てから、更に笑みを浮べてこう言います。

『ふむ、面接か・・・。楽しみだね。その名札のロゴは私の会社のシンボルマークだよ。後で、面接室で続きを話そう。』

一瞬、この意味が私には理解できませんでした。しかし、大学生たちはすぐにこの意味を悟った様子でした。どうやら、このおじさんは彼たちがこの後、面接を受ける会社の社長だったのです。私もこのビルの清掃をして何度か見かけた事はある顔でしたが、まさか会社の社長さんだったとは知りませんでした。

 私はこの仕事を与えられているだけで感謝しています。与えられている事、任せてもえる喜びを知っているから・・・。

世の中に仕事で与えられる責務は数え切れないほど種類はあるでしょう。しかし、それをバカにしたり差別したり比べる事は、決して良くないことだと思います。その職種、その責務には全てに『事情』があり『目的』があることを忘れてはいけません。

 この翌日から、トイレで用を足しながら大学生へ説教をした『少しワイルドなおじさん』は私を見る度に微笑んでくれます。そして、必ず一言声をかけてくれます。『いつもご苦労様』 ただ、その二人の大学生をこのビルで見かけることは、あれ以来一度もありません。

以上です。どうでしたか?最後にちょっと胸がスッキリしましたね。しかし、この大学生のように、これから社会で働こうとする人の中には、まだ社会や仕事に対する考え方に問題のある人は少なくないかも知れません。この大学生も、この一件が心に響いたのであれば、「良い経験をした」と注意をしてくれた社長に感謝をするべきですね。

とかく、人は見た目や外見から、物事の善し悪しを決めがちですが、このような仕事への偏見や差別発言は誰かに厳しく指摘され正されないと、自己の人生においても大きなマイナスとなります。 

また、最後に『真のプロ』と呼ばれる人は、相手の心の痛みの解る人だと言われます。誰にも「心」は見えませんが「心配り」は誰にでも見えます。それは、人が人に対する積極的な行為だからです。

トイレ掃除の業務に限らず、日々の生活において自分が「ありがたい」と感じたことは、素直にその時その場で感謝の言葉をかけられる人でいましょう。

CS室 室長  青木      

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